Leeの話

Lee の話

今回はLee の話です。

とは言っても、現在のLEE JAPANではなく、かなり古い話です。

1986年~87年くらいの事でした。当時からLeeというブランドはアメリカ三大ブランドのひとつと言われる有名なジーンズブランドでした。当時Leeブランドは株式会社堀越商会という繊維商社が日本の販売代理店としてジーンズやGジャンなどの輸入販売を行っていました。

当時日本で販売されていたのは香港などで生産されていた物がほとんどでした。当時は200-00フルカットと200-01レギュラーフィットというジーンズがメインアイテムでした。

どのような経緯だったのかは良く知りませんが、1986年~87年からLeeの日本国内での取り扱いをエドウイン社が行う事になりました。エドウイン社は日本国内でのLeeブランドの製造と販売の権利を取得し、国内工場での生産が始まりました。

エドウイン社ではLeeブランドの取り扱うにあたり、大々的に展示会を行いました。展示会には全国からたくさんのジーンズショップの方が来場されました。当時は、全国に個人経営のジーンズショップがたくさんあり、ショップのスタッフさんは長髪、サングラス、ブーツといった厳ついアメリカンスタイルの方がたくさんで、ちょっと怖い感じでした。

あるスタッフさん(グランドファンクのメンバーみたいな方)が、エドウインが作ったLeeのジーンズを見て言いました。「こんなのはLeeじゃない。俺たちが好きだったLeeはこんなのじゃない」

その発言の意味や、そのスタッフさんの言いたかった事は私には良く分かりませんでした。その方は私よりも10歳くらい年上でしたので、経験してきた事や好きだったものが私とは違います。しかし、たぶんエドウイン社が作ったLeeは、当時としては現代的過ぎたんだろうと思います。

その時、エドウイン社でLeeジャパンを担当していたTさんがこう答えました。

「もうドゥービーもイーグルスもいないなんです。今、オレたちがやらなきゃいけない事は、オレたちが好きだったドゥービーやイーグルスを、俺たちというアンプを通して若いやつらに伝えて行く事なんじゃないですか?」

この発言にはシビれました。かっこ良い! そして、確かにその通りだと思いました。音楽もファッションも、いつの時代もみんなが何かからたくさんの影響を受けて、それを自分なりに表現しているんだと思います。エリッククラプトンがロバートジョンソンのクロスロードを聞いて、自分というアンプを通してクリームで自分なりのクロスロードを弾き、クリームのクロスロードやジェフベックの監獄ロックをコピーしたチャーさんが現在でも最高のギターを弾いているのと同じことなんだと思います。

Tさんは堀越商会でLeeのビジネスを担当していた方で、Leeブランドと一緒にエドウイン社に移動してきた方でした。相手のショップスタッフさんとも親しかったようです。Tさんの発言にそのショップスタッフさんも納得していらしたようです。

その後、Leeブランドは堀越商会時代を大きく超える大ヒットブランドとなりました。

ちなみにTさんはすごくカッコよい方でした。ルックスが良くて女性にはモテモテ。英語も堪能でした。歌もすごく上手くて、アコギを弾きながらチェンジザワールドなどを歌うと、男でも惚れちゃいそうなくらいカッコよかったです。

私はとても可愛がって頂きました。一緒に飲みに行ったりバス釣りに行ったり。Tさんが退職した後もずっとお付き合いは続いていました。しかし、その方は『不良』でした。とにかく不良で、ここに書けないような事が多々あり、あまりにも不良すぎて危ないので、だんだん疎遠になっていきました。()

繰り返しになりますが

「もうドゥービーもイーグルスもいないなんです。今、オレたちがやらなきゃいけない事は、オレたちが好きだったドゥービーやイーグルスを、俺たちというアンプを通して若いやつらに伝えて行く事なんじゃないですか?」

この言葉はずーっと心に刻まれています。そして、日本のジーンズメーカーのあるべき姿を表したような言葉だと思います。

Tさん、お元気かな。これを読んでくれたら、ぜひ連絡ください。

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