ジーンズの縫製工程と、ジーンズの縫製にはなくてはならないスペシャルな縫製設備たちを紹介します。日本が誇る世界最先端のジーンズ縫製マシンについて。
Contents
基本の「き」は、縫製工程表。
縫製の工程分析表を作成する
ここではジーンズの縫製というテーマを取り上げますが、ここでいうジーンズとはファイブポケットと言われる最も一般的なスタイルのジーンズのこととご理解ください。
■ 工程分析定規と工程分析表
工程分析表の書き方には流派みたいのがあって、タテ長派やヨコ長派、また書き方も全部分けて書いたり、左右まとめたりといろいろな書き方があるようです。まあ私から言わせれば、仕事に役に立てばどんな書き方でもよいと思います。あくまでも縫製ラインにとって必要な資料なのであってこれ自体が作品ではありませんので。 私なりの書き方で、ファイブポケットジーンズの工程分析表を作成してみました。実際の業務では記号などは適当なのですが、ホームページで公表するものなので【アパレル生産管理 文化出版局】の教科書を見直し、ある程度正しい書式で作成しています。
■ JM小泉流「工程分析表」
ファイブポケットジーンズの生産(縫製)はおおよそ40工程ほどで編成されています。
上記の工程分析表は『標準的な』ジーンズを例としていますので、デザインや仕様により変化しますし、工場で使用されている設備によっても異なります。
縫製設備(ジーンズ専用ミシン)を知る
上記の工程分析表の工程記号にはルールがあって、◎はミシン工程 〇は手作業 ●はアイロン作業などを示しています。(詳しくはアパレル生産管理の教科書類をご参照ください)
ジーンズという製品は様々な要因により、全ての洋服の中で一番目か二番目くらいに生産工程の合理化や機械化が進んだアイテムであり、40工程の大部分が専用ミシン設備によって縫製されます。
■ ジーンズ縫製に欠かせない「巻き縫いミシン」
このホームページでは順次ジーンズの生産設備を取り上げていきたいと思っていますが、最初は『ジーンズの縫製にはなくてはならないミシン』『個人的な私が好きなミシン』から取り上げていきたいと思います。
ジーンズにとって欠かせない、特徴的な縫製仕様が巻き縫いであることは、【ジーンズの生い立ち】のページでたくさん述べておりますのでそちらをご参照くださるとよいと思いますが、現在、ジーンズの縫製に使用されている巻き縫いができる代表的なミシン設備には以下の三種類があります。
(1) JUKI UNION(旧UNION SPECIAL)358
(2) PEGASUS FVシリーズ
(3) JUKI MSシリーズ
これらはどのミシンも大変高性能な巻き縫い用ミシンです。JUKI・ PEGASUSとも日本を代表するミシンメーカーですが、世界中のどちらの国のジーンズ工場に行っても必ず使用されている、ジーンズ生産には欠かせないミシンです。
UNION SPECIALは現在では日本のJUKIの傘下となっておりますが、元々はアメリカのミシンメーカーで、アメリカのワーカー達が着用していた作業服を縫製するためのミシンだったようです。UNIONとはおそらく労働組合の事ですので、UNION SPECIALとは労働組合に加入しているワーカーのための専用ミシン、みたいな感じでしょうか。古いアメリカの古着などには【UNION MADE】とタグに記載されているデニムジャケットなどもあるようです。
■ JM小泉がおススメする「ユニオンスペシャル358」
私がジーンズを縫製するミシンの中で一番好きなのも、やはりUNION358(正式名称UNION SPECIAL35800)です。
なぜ好きかと言うと、第一の理由はこのミシンが無かったらたぶんジーンズという洋服は生まれてなかったと思うからです。ジーンズに使用されているデニム生地は、他の生地と比較してもかなり厚みがありますので、ジーンズの縫製に使用されるミシンは『厚物用』と言われる専用仕様のタイプがほとんどなのですが、特にジーンズの特徴であるお尻の部分の巻き縫いでは、山ハギ(バックヨーク)の重ね部分で、何と16枚のデニム生地をいっぺんに縫製するという暴挙とも思われる縫製が行われています。
この部分の縫製が、針も折れず、糸も切れず、目飛びも発生せず、モーターも止まらずに縫製できるミシンというのは、かつては世界中でUNION358だけでした。まさにミシン界のマッスルマシン、車で言えばV8 5リッターのアメ車みたいな感じです。
そして第二の理由は、カッコよいからです。(笑) 縦長のスタイルといい、糸を通すところにたくさん部品が付いていてメカっぽいところといい、みた感じがぜんぜんミシンっぽくなくてかなりカッコよいと思います。
現在でも、世界中のジーンズ縫製工場ではたくさんのUNION358がジーンズを縫い続けています。私が知っている限りでもおよそ40年前の358が現役で使用されていますので、おそらく世界では1960年代からジーンズを縫い続けている358が何台も存在していることと思います。
以下は現在でも入手できるUNION SPECIAL 35800の後継機種であるJUKI MS3580とPEGUSUS FVシリーズのカタログです。
JUKI MS 3580 https://www.juki.co.jp/industrial_e/products_e/apparel_e/cat85/ms3580.html
PEGASUS FVシリーズ https://www.pegasus.co.jp/ja/imgs/machine/series/pdf/j_fv_pam.pdf
ちなみに一時期、ビンテージジーンズのマニアの皆さんの間で『UNION SPECIAL』が流行ったことがあるようです。一般の方が目にする機会があるUNION SPECIALというと、ジーンズショップなどで裾をチェーンステッチで縫製する34500だと思います。34500で縫製したチェーンステッチのバッカリングの出かたがビンテージっぽいので人気があるのだと思います。裾ミツ巻き仕様についてやUNION SPECIAL34500というミシンについてはまたの機会に取り上げさせて頂きます。