JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 3

ブログ『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻   』ともに、とても沢山の方に読んで頂きまして本当にありがとうございます。こんなにマニアック(とはちょっと違うのかなぁ・・)な内容に対して、これほど興味を持って頂けるとは思わなかったです。

 

それでは引き続き『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 3』のスタートです。(^^)

前回解析したベルトから視線を下に進めると、コインポケットが目に入ります。これはファイブポケットジーンズの特徴でもある五つめのポケットで、元々は懐中時計を入れていたからウォッチポケットと呼ばれていたという説などもあるようです。一度ジーンズを穿きなれてしまうと、ジーンズ以外のトラウザースを穿いた時に小銭とか電車の切符(古っ!笑)  などを入れるところが無くて不便にすら感じるという、本当に便利な機能だと思いますよね。

 

さて、私が購入したLevi’sのブラックジーンズのコインポケット(以下コインPと略)を良―く見てみます。このジーンズのコインP付けは、工程としては向こう当て布(以下向う布と略)を袋布に付けた後に縫い付けられているので、袋布側にコインP付けの下糸が見えています。

コインP付けとは、一般的には2本針ミシンで縫い付ける工程です。2本針ミシンとは、文字通り針が2本付いているミシンの事で、だいたい7mmくらい(正確には6.4mm=1/4インチ または7.9mm=5/16インチあたりのゲージ)で縫製されるのが一般的です。

ところが!私のLevi’sを良―く見ると、2本針で縫製されていないのです。その根拠は、2本針ミシンで縫製した際に発生する、ある特徴が見られないからなのでした。

 

【2本針ミシンの種類】

ジーンズの縫製に使用される2本針ミシンには、大きく分けて2種類のタイプがあります。

そのうちのひとつは、2本針で縫製する際に、角の部分などで片方の針が上がる機構の付いている『片足上がり』タイプのミシン。ふたつめは、片足が上がらないタイプのミシンです。

片足上がり機構を使用した2本針ミシンの縫い目と、片足上がり機構を使わない場合の縫い目の違いはこんな感じです。ヘタな絵ですみません。

片足上がり機構を使った場合

片足上がり機構を使わない場合

 

片足上がり機構を使わない2本針ステッチの、世界で一番有名なのはこれですね。(^^)

片足上がり機構を使わない2本針の縫い目には、ある特徴があります。それは、角の部分で針を2本とも上げてから向きを変えて針を刺しなおすので、内側の糸が大きく1針分つながるのです。

そして、このステッチでは必ず、外側と内側の縫い目は同じ位置まで縫われているという現象が起きるワケです。これをジーンズマニアの皆さんの中には「三角」と呼ぶ方もいらしゃるようです。

またしてもヘタな絵ですみません。。(^_^;)

片足上がり機構を使わない2本針ミシンでの縫製の場合、この三角が現れるワケですが、正しい三角(笑)は外側ステッチと同じ位置まで縫われるので、三角が大きいのです。うーん、ご理解頂けたでしょうか?

 

そして本題の、私のブラックジーンズなのですが、三角になっています。しかし、良く見るとおかしなところがあるのに気づきます。それは、内側のステッチが外側のステッチと同じ位置まで縫われていないという事です。

この現象が発生している場合に考えられる、この工程の縫製方法としては、以下の2点が考えられます。

  • 超高性能の『ポケットセッター』というマシンを使用している。

いずれかの機会にメインコンテンツの【縫製】にて取り上げようと思っていますが、ジーンズ縫製の分野というのは自動化が大変進んだ時代がありまして、ポケット付け工程用としてポケットセッターと呼ばれる全自動のマシンが開発されたのが他のアパレル製品の製造分野と比較しても早かったです。

ポケットセッターというマシンは、元々はワイシャツの胸ポケット用として開発が完成されていましたので、技術的に流用できる部分が多かったのだろうと思います。

最新のポケットセッターは、ミシン部分にコンピーターミシンが使用されていますので、パソコンを使用した縫製パターンの入力を作成する事で様々なステッチが縫製できます。この入力データをいわゆるビンテージ風に作成し、いろいろな形状の三角を表現する事が可能です。

  • 実は1本針ミシンで縫製している。

コインP付けは2本針ミシンで縫製するのが一般的だと思いますが、このLevi’sの縫い目を見た限り、前述のとおり2本針ミシンで縫製された特徴がありません。とすると①の最新式ポケットセッターを使用している可能性はあるのですが、縫い目を良―く見てみると内側と外側のステッチ巾が微妙に一定では無い部分があるのに気づきました。もちろんポケットセッターでもこの縫い目は表現できるのですが、もっと簡単に考えると本縫いミシンで内側と外側を別々に縫っていると考えたほうが自然だと思います。

という事で、結論としてはこのジーンズのコインP付けは本縫いミシンで、ステッチ間隔0.7mmくらいで2回縫っているという事になります。

 

私がこの部分に何でそんなに興味を持ったかと言うと、『Levi’sの量産品のジーンズで、わざわざ工場に対して、コインP付けに1本針ミシンを使用するよう指示してまでビンテージテイストの雰囲気を表現している』という点なのです。

MADE IN JAPANのコダワリジーンズブランドなどであれば、ポケット角の三角などは珍しく無いとは思います。しかし、メキシコ製の大量生産の世界向けジーンズで、こんな風に細かい部分にコダワリを見せているLevi’sは流石ですね。(しかも内側からしか見えない部分ですからね。。笑)

おそらく、デザイナーや企画のスタッフに、ビンテージ好きな方がいらっしゃるんでしょうね。(^^)

 

ジーンズは世界中で愛用されていて、世界中で生産されています。こんな風にジーンズ一本買っただけで、遠いメキシコのジーンズ工場に思いをはせる事ができる【JEANS JOURNEY】は楽しいですねー。(^^)

最後に、カッコ良い2本針ステッチの写真を。BLUE ROUTEの佐井君が縫ったGジャンの衿先です。

ビンテージテイストなので衿先のステッチを三角にしているのですが、角度がきついので片足上げないと行きすぎてしまうので実は角部分で一針だけ内側ステッチの片足を上げて向きを変えているという、すごい芸の細かさです。(^O^)

そして、『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 4』に続きます。(^^)

JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 2

前回のブログ『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 1』は想像を超える反響の大きさでした。読んで頂きました皆様、本当にありがとうございます! 実は前回の内容で計算が間違えている部分に真夜中に気づき、慌てて修正したりしました。(^_^;) これほど興味を持って頂けると、嬉しい反面間違えた事を書いてはいけないという責任も感じます。引き続き『なるべく正確な』(笑)内容をお届けしようと思います。なお、間違いなどがあった場合、私にとっても勉強になりますので遠慮なくコメントください。以下のコメント欄でも、連携しているSNSでも結構です。(^^)

 

さて、それでは『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 2』のスタートとなります。

このジーンズの解析を行うにあたり、どこから行こうかと考えてパッと目についたのがベルトです。なのでベルトから解析して行こうと思います。

このベルトの縫製仕様を見ると、ベルトの上のステッチと下のステッチが環縫い(かんぬい) で縫製されています。環縫い=チェーンステッチと呼ぶ方もいると思います。環縫いという縫製仕様は、いわゆる環縫いミシンを使用して縫製する方法で、ジーンズの縫製ではお尻とはバックヨークとか脇の地縫いとか、アチコチに使用されています。

 

ジーンズのベルト付けというのは他のトラウザースと全く異なる縫製仕様で作られています。ジーンズのベルトは、縫製工程としては前身頃と後ろ身頃が縫い合わされた後で、ウエストをぐるりと一周縫製します。スラックスなどでは、お尻部分で寸法出し(サイズを大きくしたり、詰めたり)できるように、ベルトごと後ろ中心で縫い合わされている物もありますが、ジーンズの場合にはお尻が縫い合わされた後でベルトが付けられていますので、後ろ中心で寸法出しする事は不可能です。

 

 

 

 

 

 

 

 

このベルトというのは、基本的には(カーブベルトなどで無い場合)一枚の生地をバインダーを通して二つに折り曲げて身頃に縫い付けられていきます。

 

ジーンズのベルト付けに使用されるミシンは世界には何機種が存在しています。古いものではユニオンスペシャル51800とか、最近ではPEGASUSミシンさんのTM625シリーズ、また海外では独デュルコップアドラー社などから発売されているかと思います。

(写真はBLUE ROUTEさんの51800  ホームページ https://www.blueroute.rocks/

このベルト付けミシンは、いわゆる多本針仕様になっています。例としてペガサスミシンさんのTM625B×04タイプでは、最多4本の針が取り付けられます。下のミシンの写真を見て頂くと、糸を通す皿状の部品がたくさん付いているのがお判りになるかと思います。

 

PEGASUSミシンさんのTM625シリーズ カタログ https://www.pegasus.co.jp/ja/imgs/machine/series/pdf/j_tm625_gen.pdf

 

なぜ4本も針が付けられる仕様が必要になるのかというと、一部のワーク系ジーンズなどでベルト付けを2本針で縫製するケースがある事が大きな理由かと思います。最近ではほとんど目にすることは無いですが、まれにベルト付け2本針仕様のビンテージ風ベインターパンツなどを見かける事もあるかと思います。

そして本題の、私が購入したLevi’sのブラックジーンズのベルト付けですが、実はこのベルト付けも2本針のミシンで縫製しています。ミシン針は針カブと呼ばれる部品で取り付けられているのですが、このジーンズのベルト付けミシンには2本の針の間隔が35mm(おそらく海外規格なのでインチですが)の針カブが使われており、ベルトの上と下を一度に縫製しています。

私が知る限り、最近のLevi’sのベルト付けは全て2本針環縫いミシンだと思います。

一般的にスラックスの縫製仕様では、ベルト付けはベルトと身頃を地縫いして、ベルトを返してステッチを入れます。ベルトにステッチが入る仕様では、ベルト付けの後でステッチを入れるので、絶対にジーンズのような上下環縫い2本針のベルト付けにはなりません。

ベルト付け環縫い2本針とは、とてもジーンズらしい、徹底的に生産性を追求されていた結果として出来上がった仕様になっていると言えます。

それでは、全てのジーンズがこのように2本針環縫いミシンで縫製されているのでしょうか? ぜひ皆さん、ご自分のジーンズを取り出して、じっくりと見てみてください。

 

私のLevi’sのように、2本針環縫いのジーンズもあると思いますし、中にはベルト付け(ベルトの下側)だけが環縫いでベルトの上(半周 以後ベルトコバステッチと呼びます。)は環縫いではなくて本縫いで縫製されているジーンズも多いと思います。

おそらく、日本のジーンズメーカーが作ったジーンズはベルトコバステッチは本縫いミシンで縫われている物が多いと思います。

環縫い2本針でベルト付けをすれば、工程数としては一工程で済むワケです。それではなぜ2本針では無くて、わざわざベルト付けを環縫いで縫製して、ベルトコバステッチは本縫いミシンを使っているのでしょうか?

私の知る限り、世界中のジーンズ縫製工場で使用されているベルト付けミシンは多針仕様です。日本のジーンズメーカーのジーンズも多針仕様のベルト付けミシンで縫製されていますので、針が2本取り付けられないという事はありません。

それではナゼ? ベルトコバステッチがわざわざ本縫いミシンで縫われているのでしょうか?

この理由はいくつかあるだろうと思います。私が経験した32年間にもベルト付けについて、とても色々な出来事がありました。様々な理由が複合的に考慮された結果、わざわざベルト付けとベルトコバステッチのミシンを分けるという仕様が生まれたと考えられます。

 

①ストーンウォッシュ加工で切れるから。

日本では、海外と比べてジーンズへのストーンウォッシュ加工の導入が早かったのです。そして、ストーンウォッシュ加工を行った際に、最もダメージが出やすい部分がベルトのキワでした。その後、試行錯誤により環縫いの下糸にポリエステルフィラメント糸を使用する事や、環縫いの上糸を極端に絞める事により糸切れを防止するという対策が世界中のジーンズ工場で取り入れられましたが、ストーンウォッシュ加工開発当初はまだ方法が分からなかったため、ベルトコバステッチを環縫いにすると糸が裏側(下糸側)でボロボロに切れてしまいました。そのため、ベルトコバステッチは切れにくい本縫い仕様になりました。

 

②カーブベルトというアイデアを考えたため

日本では、ストーンウォッシュ加工の開発成功と同時にスリムフィットジーンズを世界に向けてデビューさせました。

スリムフィットジーンズは極端にタイトなフィットのため型紙の特性上、ウエストの後ろ側が浮きやすく(ベルトの上が余るような状態)ベルトにカーブを付けたカーブベルトを取り入れたメーカーが多かったのです。カーブベルトとはベルトの型紙の上端と下端に最大4cm程度の差寸を付けていましたので、2本針で縫製する事は無理でした。そのため、ベルト付けとベルトステッチを分ける必要がありました。2本針ミシンは構造的に2本の針が同じストロークで動き、同じ運針ピッチとなりますので、並行する2本の縫い目しか縫製する事ができません。

 

③ベルト巾をやたらと変える

私が購入したLevi’sはベルト巾が42mmくらい(使用しているバインダーはインチ規格だとは思います)で針カブが35mmくらいです。これは私の想像にすぎませんが、このジーンズを縫製しているラインではベルトは全て42mmだろうと思います。なぜかと言うと、2本針環縫いの場合は針カブが固定なのでベルトのサイズを簡単には変えられないからです。

変えようと思えば変えられるのですが、もしも変えようとすると針カブを違うサイズに交換して、下糸側のルーパーの位置を動かして調整したりと大変な手間がかかります。なので普通は変えません。

とうことは、2本針の針巾が一緒である以上ベルトステッチの位置は決まってしまいますので、ベルトの巾も変えられません。

ところが、昨今のジーンズはファッションとして進化していますので有名無名ほとんどのデザイナーがジーンズをコレクションに入れています。そして、だいたいのデザイナーさんは感性で『ベルトはあと2mm狭く』とか『あと3mm細いほうが良いね』とかおっしゃいます。そもそも一般アパレルの分野ではベルト付けは地縫い返しステッチが標準ですので、ジーンズのベルト付けにバインダーが使用されているなどという知識はありません。

ジーンズを生産する側の立場から言わせて頂くと「エーッ、2mmくらい、変えなくても良いじゃん」とか思うワケですが、個性と感性が売り物のデザイナーさんからすれば譲れない部分なのだろうと思います。

そして、ジーンズの縫製工場では2mm違うくらいのベルト付け用のバインダーが増えていきます。

つまり、ベルト巾が変わる以上、2本針ベルト付けは無理なワケです。

 

④肌に当たると痛い

ジーンズを着用する際にベルトにTシャツなどをインしていれば問題無いのですが、夏場などにTシャツをジーンズから出して着たり、ローライズの下着を着用している女性などでは、ジーンズのベルトの裏側が直接地肌に触れます。特に最近のジーンズは、環縫いの下糸にフィラメント糸などの硬い糸を使用している事が多く、ベルト上のステッチに環縫いを使用すると裏側のボコボコした縫い目が地肌に擦れます。これは人によって、敏感肌の方とそうでもない方がいらっしゃるかと思います。ちなみに、私の肌は大変デリケートですので、先日Tシャツを出して着ていたら腰のあたりがチクチクしました。

この4点以外にも理由はあるかと思いますが、私の経験では以上の理由が大きいだろうと思います。これらをひっくるめて説明すると要するに『品質のため』という事になるかと思います。

良い、悪いというレベルの話では無いのですが、作業着として誕生したジーンズがファッションとなり、シルエットや洗い加工の多様化により、作業着としてのジーンズとファッションとしてのジーンズは一見そっくりなようで異なる進化をしてきたという事だろうと思います。

 

もう20年以上前ですが、国際的なミシンの展示会で海外のミシン改造メーカーと話した事があります。そのメーカーではベルト付け2本針環縫いのミシンに自社開発のアタッチメントを取り付けており、精度はかなり高く素晴らしい開発だと思いました。熱心にそのマシンを進めてくるそのメーカーのスタッフに『日本ではベルト付けは環縫いでベルトステッチは本縫いでやっている』と言ったら『ハア? アホチャウカ? (関西弁では無かったですが。笑)』と言われました。

たかがジーンズ、されどジーンズ。いろいろなジーンズがあって、様々な考え方があって、そして世界中のジーンズを生産する方たちが切磋琢磨するからジーンズ作りは楽しいんだと思います。(^^)

うーん。ベルト付けだけでブログ一回終了してしまいました。『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 2』おしまいです。

まあ、趣味でやっているのでどんだけ長くなっても良いんですが。(笑)おヒマな方だけお付き合いくださいな。

最後まで読んで頂いてありがとうございます。乱筆乱文、誤字脱字などお許しください。(^^ゞ

JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 3』に続きます。

JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 1

JEANS MEISTERを名乗る以上、毎日ジーンズを穿いています。なお、最近やたらと食べ物や飲み物が美味しくて、気づいてみたら過去最大体重を更新中です。

そして、穿いていたジーンズがなぜだかどんどんきつくなっている。(理由は分かっているが。。)

毎日穿くジーンズなのに、穿けるのが2本くらいしかなくなってしまいました。(T_T)

という事でジーンズを補充する必要が出てきまして、久しぶりに買いました。新しいジーンズ。しかも2本まとめて大人買い!(すでにじゅうぶん大人ですが。。)

とは言っても、最近仕事中に車のタイヤにジーンズを擦ってしまうことが多く、ブルーデニムの腿のあたりとかに黒いタイヤのヨゴレが付いてしまい、ちょっと外出用には無理な感じになっていました。

そして考えた結果、どうせ黒いヨゴレが付いちゃうのならば、いっそ仕事用はブラックジーンズにしようと思い、ネット通販でいろいろと探しました。

私のブロフィールの最初のほうでお断りしているのですが、私はビンテージジーンズとか、コテコテのこだわりデニムなどにはあまり興味がありません。ただし、シルエットにはこだわりがありまして、ブーツカットしか穿きません。今どきブーツカットって珍しいですよね。(^^;  だいたい、ここ20年くらいブーツカットがすごい流行ったという事すら無いようにも感じます。

まあ、なぜ私がブーツカットを穿くのかという部分はまたの機会に説明するとして、Amazonや楽天でブーツカットのブラックを探しました。サイズはウエスト3●インチ×レングス3●インチという、ちょっと特殊なサイズでもあり、なかなか見つかりません。(昔、某社にリッチマンというブランドがありましたが、そのくらいです。笑)

そして!楽天でやっと、探しているジーンズを見つけました。私が求めているものジャストサイズのブーツカットのブラックジーンズ!それがこちらです!

なんの変哲も無い、特に目立った特徴も無いジーンズです。まあ、こだわりのジーンズマニアの方ならば全然興味を引かないようなジーンズだと思いますが、私としてはジーンズってだけでじゅうぶん興味深いのです。ということで、前置きが大変長くなりましたが、JEANS MEISTERらしく今回購入したジーンズをいろいろな角度から眺めて、じっくりと解析して行こうと思います。

なお、こういうのを始めると大変長くなると思います。一応今回のブログのタイトルは『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 1』としていますので、後日続いて『2』『3』と展開していきます。果たしてどこまで続いてしまうのかは自分でも分かっていません。(^-^;

 

【今回今回購入したLevi’sのブーツカットジーンズを見ながらの考察】

① 企画および生産 品質表示ネームについて

このジーンズを購入した際の楽天ストアの商品説明で『USA企画』と書かれていました。現行のリーバイス・ジャパンの公式ホームページなどにもこの商品〝00517-0260〟という品番は無いようですので、WEBショップの説明のとおりUSAのLevi’sが企画したモノなのだろうと思います。なお、原産国表示はメキシコ製となっています。昨今、中国製品のアメリカへの輸出などが何かと話題になる事が多いですが、やはり輸送コストなどを考えるとアメリカで販売される製品はメキシコで生産されているケースが多いのでしょうね。特にLevi’sはサンフランシスコ発祥の会社ですので、お隣のメキシコでの生産が以前から続いているようです。

このジーンズの品質表示ネームを見て、まず大変興味深いのは品質表示の多国籍対応です。

ベルトの内側あたりに、ポリエステルのサテン織り(かな?)テープタイプの品質表示が4枚も付いています。

こういう品質表示の付け方はH&MとかZARA、GAPなどのいわるゆるグローバルブランドの製品の特長とも言えます。

この品質表示を良―く見てみると、書かれている会社の名前から、アメリカ(メキシコ・ブラジル含む)・韓国・日本・インドネシアでの販売に対応できるように品質表示が取り付けられているようです。

取り扱い表示については《MACHINE WASH COLD.DO NOT BLEACH》というお馴染みのアメリカの取扱表記、ヨーロッパおよび世界標準とされているISO取扱絵表示、日本向けの新JIS取扱絵表示、韓国の取扱絵表示の4パターンが記載されています。

この表示を改めてじっくりと見て、今回初めて面白いと気づいたのが韓国の取扱絵表示です。この絵表示、どこかで見覚えありますよね。そうです。いわゆる日本の旧JIS絵表示にそっくりなんです。へー、韓国の絵表示ってこんなだったのですね。旧JIS絵表示の、フラスコの絵の中に《エンソサラシ》と書かれている部分や、ドライクリーニングの丸い絵柄の中に《ドライ》と日本語で書かれた部分が韓国語に置き変わっているのです。

《韓国向けの取扱絵表示》

これは、どういう経緯なのでしょうね。まあ、韓国が日本の取扱絵表示を参考にしたという事は間違いは無いだろうと思います。そして参考にされた日本の取扱絵表示は、すでに旧JISとは全然違っており新JISの絵表示に変わっています。しかし、ISOと同じようで実は同じでは無いのでISO絵表示とISO絵表示みたいな新JIS絵表示が2行に記載されるという不思議な状況になっているのでした。

なお、品質表示ネームは3枚付いているのですが、この3枚を良く見ると2枚と1枚でテープの材質が違います。さらに良―く見ると、上についている取扱い表示と原産国、組成表示、注意表記が記載されているネームは印刷されています。そして材質が違う1枚には〝PC9-00517-0260〟という品番と〝W 3● L 3●〟〝●2cm〟などの品番やサイズといった可変部分に分かれており、こちらのテープの文字は印字(印刷ではない)になっています。

このあたりのテクニックはさすがLevi’sだと思います。内容が変わらない表示は印刷で大量に作り、対応できる全てのアイテムに同じネームを使用する事により手間とコストを抑え、内容が変化する部分だけ別のネームに印字して作っているワケです。ちなみに、ポリエルテルのサテン織り風テープに印字というのは、インクがテープに染み込みにくいため文字が薄くなってしまう事が多く、私の経験上、かなり難易度の高い作り方だと思います。これを実現しているあたり、さすがLevi’sですね。

ネームでもうひとつ興味深いのが、品質表示の3枚の隣に1枚だけで取り付けられているちょっと小さめのネーム。これには《CARE FOR OUR PLANET》と書かれており、続いて数か国語で書かれています。ネームをめくると裏面には日本語で「私たちの地球の為に。必要以上の洗濯は避け、水で、吊り干し、そして寄付またはリサイクルへ」と書かれているのでした。なるほど。お湯を沸かすためには電気やガスを使いますので、発電のためのエネルギーを使ってしまいます。ジーンズを干すときにも、乾燥機などを使うとやはりエネルギーを使ってしまいます。着用する人も環境に配慮してお湯ではなくて水で洗濯し、乾燥機を使用せずに天日で吊り干しするように訴える内容を表記する。地球を守るために自社製品から生じるカーボンフットプリントを削減しなくてはならないという理念は素晴らしいと思います。

《*カーボンフットプリント  一つの商品における原料の採掘や栽培、製造、加工、包装、輸送、および、購買・消費されたあとの廃棄に至るまでの、それぞれの段階で排出された温室効果ガス(温暖化効果ガス)である二酸化炭素 (CO2)などの総合計を重量で表し、商品に表示することをカーボンフットプリントと呼ぶ。引用元 Wikipedia *注 「フットプリント」の意味から考えても、カーボンウェイトとすべきだという批判もある 引用元 Wikipedia》

すでに3枚も付いている品質表示ネームに、さらに1枚、石油由来原料であるポリエルテル製のネームを追加して付けてまで(笑)企業ポリシーをアピールする姿勢は、さすがに世界のアパレルをリーダーであるLevi’sだと改めて感激しました。

 

②ジーンズに使用されている生地のウエイト(オンス)について

一般的にジーンズに使用されているデニム生地については、生地の厚さ(重さ)をオンスで表すという事が知られています。「このデニムはだいたい14ozだね」みたいな感じに使われます。デニムにお詳しい方ならば、触っただけで大体の生地ウエイトは分かるだろうと思います。

皆様も良くご存じのとおり生地のオンスとは『1平方ヤードあたりの生地の重量』を計測して算出します。つまり14ozとは1yd2の重さが398グラムの生地という事になります。それでは、今回私が購入したブラックジーンズは、果たして何オンスの生地を使用しているのでしょうか。

計算 (細かい部分はテキトー)

製品の重量は台所用メジャーで測ったところ825グラムありました。ちなみにこのジーンズのサイズは一般的なものよりもかなり大きい(≧▽≦)ので、その分重量は重いです。

このジーンズに使用されているツイルの生地の用尺は、ブーツカットというシルエットと大きなウエストサイズからおそらく1.5mくらいだと推測します。(^_^;) これは正確にはCADで型入れしてみないと分かりませんが、経験上そんなに誤差は無いだろうと思います。

そして、このパターン(型紙)の型入れの効率(歩留まり)は 80パーセント程度と予測しますので、生地の1mあたりの重量Ⅹ=825グラム÷1.5m÷8×10となり、X=688グラムという事になります。なお、この688グラムは1m×150cm(タブル巾)あたりの重量、つまり1.5㎡あたりであり、オンスに換算する場合には1yd2=0.84㎡ですので、0.84÷1.5=0.56%となり、1yd2の重量は385グラムという事になります。385グラム÷28.4グラム=13.5オンスですので、このブラックジーンズに使用されている生地のウエイトは13.5ozという事になりますね。

細かいことを言いますとジーンズにはボタンやファスナー、リベットなどの付属が付いていますし縫製に使用しているステッチ糸などの重量もありますので、実際にはもう少し軽いのだろうと思います。しかし、附属や糸の重量はせいぜいトータルで20グラム程度ですので、それ程大きな誤差にはならないだろうと思います。

ちなみに現在愛用しているストレッチデニムのブーツカットの重量を計測したら663グラムでした。つまり、上記と同じ計算をすると10.8オンスでした。実際に生地を触った感じもだいたいそれくらいのウエイト感です。という事で、この計算はほぼ間違いないだろうと思います。

 

しかし、こうやって見てみると、今回購入したブラックデニムのブーツカットってかなりヘビーウエイトですね。(-_-;) 実際、最近の暖かい日に穿いていたらかなり蒸れました。この先、夏に向かって行くことを考えると、このブラックジーンズはかなり暑そうです。今どきの生地で13.5ozってあんまり無いくらいの厚さです。

これは夏はちょっと無理だなあ。。

どこかに、12ozくらいのブラックツイルのブーツカットは売っていないでしょうか。。(^_^;)

 

*上記の内容について「計算が間違っている」とか「良くわからない」というご質問などあれば、お気軽に以下フォームよりご連絡ください。(^^)

『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 1』おしまい。そして2に続く