JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 3
ブログ『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 1 2』ともに、とても沢山の方に読んで頂きまして本当にありがとうございます。こんなにマニアック(とはちょっと違うのかなぁ・・)な内容に対して、これほど興味を持って頂けるとは思わなかったです。
それでは引き続き『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 3』のスタートです。(^^)
前回解析したベルトから視線を下に進めると、コインポケットが目に入ります。これはファイブポケットジーンズの特徴でもある五つめのポケットで、元々は懐中時計を入れていたからウォッチポケットと呼ばれていたという説などもあるようです。一度ジーンズを穿きなれてしまうと、ジーンズ以外のトラウザースを穿いた時に小銭とか電車の切符(古っ!笑) などを入れるところが無くて不便にすら感じるという、本当に便利な機能だと思いますよね。
さて、私が購入したLevi’sのブラックジーンズのコインポケット(以下コインPと略)を良―く見てみます。このジーンズのコインP付けは、工程としては向こう当て布(以下向う布と略)を袋布に付けた後に縫い付けられているので、袋布側にコインP付けの下糸が見えています。
コインP付けとは、一般的には2本針ミシンで縫い付ける工程です。2本針ミシンとは、文字通り針が2本付いているミシンの事で、だいたい7mmくらい(正確には6.4mm=1/4インチ または7.9mm=5/16インチあたりのゲージ)で縫製されるのが一般的です。
ところが!私のLevi’sを良―く見ると、2本針で縫製されていないのです。その根拠は、2本針ミシンで縫製した際に発生する、ある特徴が見られないからなのでした。
【2本針ミシンの種類】
ジーンズの縫製に使用される2本針ミシンには、大きく分けて2種類のタイプがあります。
そのうちのひとつは、2本針で縫製する際に、角の部分などで片方の針が上がる機構の付いている『片足上がり』タイプのミシン。ふたつめは、片足が上がらないタイプのミシンです。
片足上がり機構を使用した2本針ミシンの縫い目と、片足上がり機構を使わない場合の縫い目の違いはこんな感じです。ヘタな絵ですみません。
片足上がり機構を使った場合
片足上がり機構を使わない場合
片足上がり機構を使わない2本針ステッチの、世界で一番有名なのはこれですね。(^^)
片足上がり機構を使わない2本針の縫い目には、ある特徴があります。それは、角の部分で針を2本とも上げてから向きを変えて針を刺しなおすので、内側の糸が大きく1針分つながるのです。
そして、このステッチでは必ず、外側と内側の縫い目は同じ位置まで縫われているという現象が起きるワケです。これをジーンズマニアの皆さんの中には「三角」と呼ぶ方もいらしゃるようです。
またしてもヘタな絵ですみません。。(^_^;)
片足上がり機構を使わない2本針ミシンでの縫製の場合、この三角が現れるワケですが、正しい三角(笑)は外側ステッチと同じ位置まで縫われるので、三角が大きいのです。うーん、ご理解頂けたでしょうか?
そして本題の、私のブラックジーンズなのですが、三角になっています。しかし、良く見るとおかしなところがあるのに気づきます。それは、内側のステッチが外側のステッチと同じ位置まで縫われていないという事です。
この現象が発生している場合に考えられる、この工程の縫製方法としては、以下の2点が考えられます。
- 超高性能の『ポケットセッター』というマシンを使用している。
いずれかの機会にメインコンテンツの【縫製】にて取り上げようと思っていますが、ジーンズ縫製の分野というのは自動化が大変進んだ時代がありまして、ポケット付け工程用としてポケットセッターと呼ばれる全自動のマシンが開発されたのが他のアパレル製品の製造分野と比較しても早かったです。
ポケットセッターというマシンは、元々はワイシャツの胸ポケット用として開発が完成されていましたので、技術的に流用できる部分が多かったのだろうと思います。
最新のポケットセッターは、ミシン部分にコンピーターミシンが使用されていますので、パソコンを使用した縫製パターンの入力を作成する事で様々なステッチが縫製できます。この入力データをいわゆるビンテージ風に作成し、いろいろな形状の三角を表現する事が可能です。
- 実は1本針ミシンで縫製している。
コインP付けは2本針ミシンで縫製するのが一般的だと思いますが、このLevi’sの縫い目を見た限り、前述のとおり2本針ミシンで縫製された特徴がありません。とすると①の最新式ポケットセッターを使用している可能性はあるのですが、縫い目を良―く見てみると内側と外側のステッチ巾が微妙に一定では無い部分があるのに気づきました。もちろんポケットセッターでもこの縫い目は表現できるのですが、もっと簡単に考えると本縫いミシンで内側と外側を別々に縫っていると考えたほうが自然だと思います。
という事で、結論としてはこのジーンズのコインP付けは本縫いミシンで、ステッチ間隔0.7mmくらいで2回縫っているという事になります。
私がこの部分に何でそんなに興味を持ったかと言うと、『Levi’sの量産品のジーンズで、わざわざ工場に対して、コインP付けに1本針ミシンを使用するよう指示してまでビンテージテイストの雰囲気を表現している』という点なのです。
MADE IN JAPANのコダワリジーンズブランドなどであれば、ポケット角の三角などは珍しく無いとは思います。しかし、メキシコ製の大量生産の世界向けジーンズで、こんな風に細かい部分にコダワリを見せているLevi’sは流石ですね。(しかも内側からしか見えない部分ですからね。。笑)
おそらく、デザイナーや企画のスタッフに、ビンテージ好きな方がいらっしゃるんでしょうね。(^^)
ジーンズは世界中で愛用されていて、世界中で生産されています。こんな風にジーンズ一本買っただけで、遠いメキシコのジーンズ工場に思いをはせる事ができる【JEANS JOURNEY】は楽しいですねー。(^^)
最後に、カッコ良い2本針ステッチの写真を。BLUE ROUTEの佐井君が縫ったGジャンの衿先です。
ビンテージテイストなので衿先のステッチを三角にしているのですが、角度がきついので片足上げないと行きすぎてしまうので実は角部分で一針だけ内側ステッチの片足を上げて向きを変えているという、すごい芸の細かさです。(^O^)
そして、『JEANS MEISTER.小泉 ジーンズを買うの巻 4』に続きます。(^^)
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